紅秋 (ルーカス明美)

山口県美祢市の小さな町、美東町生まれ。3歳で癌により左目の視力を失い、バランスの感覚を取り戻すために8歳の時に母に連れられ藤本青山の『鳳南書芸会』にて書を始める事になる。 幼少の頃からとても病弱な上に非常に敏感で人の感情を感じやすく、その事が原因で何度も入退院を繰り返していた。その体験から人の命の尊さ、また芸術作品にはその作者の人生や感情が映し出されることを感じ理解するようになっていた。今日がもしかしたら最後の日かもしれないと、何をするにも後悔の無いように精一杯取り組み、筆を持つ瞬間の心のあり方を子供ながらにとても大切にして過ごしていた。書に触れたきっかけは自らの意思ではなかったものの、次第に心は書の世界に魅了され虜になっていった。後に、書の奥にある禅の思想を学ぶようになり、幼少の頃から感じ大切にしてきた思いと重なることを理解し、さらに書の道に深く歩むようになる。

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師匠の藤本青山の書道家系図を辿ると有田鶴堂、丹羽海鶴、そして明治時代の現代書道の三筆と言われていた有名な日下部鳴鶴に繋がる。青山に師事し、16歳で東京の文化書道学会に入会し同じく日下部鳴鶴の弟子でもある西脇呉石の書風を学び、その後更に多数の著名な書家の書風にも触れる。

 

入院中でも海外旅行中でも、どんな状況であれ師匠青山から学び練習をし続け、24歳で師範の免許を取得し、師匠から雅号『紅秋』を受理する。

その翌年1992年、英国での語学留学からの帰国後、地元で『ドリームハウス』という英会話教室及び書道教室を開設する。その間も青山師に師事し続け、南画、水墨画、篆刻、表装を学び、揮毫士教授の資格、ペン字師範を取得する。長年に渡る鍛錬で紅秋独自の立体的に見える『白浮技法』を生み出し、紅秋の魂そのものを注ぎ込む技法は後に多くの人々の心の魅了するようになる。

 

英国人の夫との結婚生活わずか5年目の1998年、死別。2021 年、亡き夫の遺志を継ぐため、重い心を抱えながら250人の生徒に別れを告げドリームハウスを廃業し、 1 歳の娘と共に渡英する。英国を拠点にKoshu Japanese Artとし書道、水墨画の指導及、作品展、ワークショップ、デモンストレーション、講演、依頼の作品制作など多方面で活動し日本の芸術文化の普及に貢献する。教師としては生徒一人ひとりの個性を引き出すよう努め、指導をしている。紅秋の指導の元、現在では文化書道学会で毛筆部門にて11名、硬筆部門にて10名の師範免許取得者が誕生しており、国際的に後継者の育成にも力を注いでいる。

 

苦難な道を歩みながら、紅秋の心が自然と筆を握り人生そのものを作品に表現する。どんな時も初心を忘れず、泥沼のような困難な状況に追いやられても、蓮のような清らかな花びらを咲かせる心を持ち筆を持つこと。その二つの言葉を青山師匠は紅秋に伝えてきた。師が息を引き取る最後まで師事し続け、その想いは今でも紅秋の心の奥深くに響き渡っている。紅秋が描く独自の作品は伝統的な技法を元に古典的でありモダンである。東洋的であり、西洋的でもある。そして過去でもあり未来でもある。書は紅秋にとって絶対に切り離せない人生そのものとなっている。

 

2013年のロンドンでの個展を機にそれまでの紅秋の歩みを綴った書道作品集『愛と夢』を出版し国際的に書道家として大きく一歩を踏み出す。2018年秋には紅秋はジョージアの日本大使館主宰のイベント『徳川とマスターズ』に招待され、その翌年2019年には日本大使館と国立美術館主宰にてシグナギ美術館にてソロ個展の開催、及び国立美術館で作品が披露された。作品展のみならず、ワークショップ、デモンストレーション、作品の依頼など、様々な分野で貢献しており、最近のハイライトとしては2018年にデザイン部門で金賞を受賞したクラフトジンとリキュールのブランド『KOKORO』のラベルデザイン、またタザキフード社の独自のブランド、『ユタカ』の新パッケージの作品。2019年の東京で開催されたラグビーワールドカップの授賞式の大画面の作品。2020年東京オリンピックに作品制作にも関わり更に紅秋の作品は世界的に披露された。

 

それまでの活動が評価され2021年にはDomestikaでのオンライン水墨画コースが開設、翌年には第二弾のコースが続けて開設された。そして今年の2024年にはブルームズベリー出版社より水墨画の本が出版予定である。そして一度別れを告げた日本の教室ドリームハウスを2022年再開し、今年2024年秋より国内外からの生徒に対面で日本のアートを紹介できるレジデンシャルコースを開設予定である。

 

 

ジョージア国、日本大使からの紹介状

英国にての紅秋の書道活動

2001—2006年英国、日本に一時帰国。2010年に再渡英、現在までの書道活動

紅秋の作品展

2001年6月 サウスナットフィールドにて、エリザベス女王60年記念祭にて書と水墨画を数点展示

2004年2月 ブレッチングリー中央ギャラリーにて紅秋ソロ作品展『真心』を開催

2004~06年 イーストクロイドンのホテルのロビーに作品を数点展示

2013年11月 ロンドンフレイムレスギャラリーにて紅秋ソロ作品展『愛と夢』を開催
同時に『愛と夢』の紅秋の作品集を出版

2014年7月 オックスフォードで行われたアートインアクションにて多数の作品を展示

2016年7月 オックスフォードで行われたアートインアクションにて多数の作品を展示

2016年10月 下関旧英国領事館施工110周年記念イベント、紅秋書道作品展『心花』〜光と繋がる瞬間〜を開催

2017年9月−12月 サンフランシスコ図書館、スカイライトギャラリーにて開催された『カリグラファーインカンバセーション』にて紅秋の作品を展示

2019年7月−9月 ジョージア日本大使館主催でシグナギ美術館及び、首都トビリシの国立博物館にてソロ作品展「響」を開催

ワークショップ及びデモンストレーション

2004年4月 リングフィールドにて、日本書道、水墨画の講演及びデモンストレーション開催

2010-12年 英国、私立ウォールディングハム学校にて書道の指導をする

2011年10月 紅秋の生徒の作品展にて、書道のワークショップ及び、和風カード制作ワーク シ ョップを実施

2011年 — 紅秋書道教室にて篆刻のワークショップの実施を始める。

2013年5月 英国の公立ウェイブル学校にて書道ワークショップを実施。生徒、先生、アートクラスの生徒を対象に3ワークショップ

2014年7月 オックスフォード、ウオーターペリーにて、英国最大 のアートイベントにて、作品の展示及び、書道、水墨画のデモンストレーションを4日間にかけて実施

2014年9月 ケント州で英国のカリグラフィーグループの書道のワンデーワークショップ実施

2014年11月 ケント大学でのイベント、アニフェストにて2日間にかけてワークショップ 及びデモンストレーションを実施

2015年2月— 子供用の書道、墨絵、篆刻のワークショップを開始

2015年7月 英国の公立ウェイブル学校のジャパン祭りにて書道ワークショップを3クラス実施。

2015年11月— 紅秋書道教室にて書道、篆刻のワークショップに加え、水墨画のワ ークショップを開催。

2016年7月 オックスフォードのアートインアクションに2度目の参加。作品の展示及び、水墨画、書道のデモンストレーションを4日間にかけて実施。

2016年7,8月 ケイトラムにて水墨画のワークショップを開催。

2016年10月 下関旧英国領事館施工110周年記念イベント、紅秋書道作品展『心花』〜光と 繋がる瞬間〜開催中に書道、墨絵のワークショップを7回実施。

2017年2月 英国フリートにて合気道のチャリティーセミナーにてデモンストレーション開催

2017年4月 英国サリー州キャンベリー女性協会にてデモンストレーション開催

2017年4月 英国ギルフォードにて合気道のメンタルヘルスのチャリティーセミナーにてデモンストレーション開催

2017年7−8月 日本旧英国領事館にて4日間のワークショップ開催

2017年11月 アメリカ、オークランドアジアカルチャーセンターにてデモンストレーション開催

2017年11月 アメリカ、サンフランシスコ図書館、作品の展示及びデモンストレーション開催

2017年12月 英国ロンドンにて空手チャンピオンシップにてデモンストレーション開催

2017年12月 英国ベイジングストークにて兵法二天一流英国支部セミナーにてデモンストレーション開催

2018年3月 英国フリートにて合気道のチャリティーセミナーにてデモンストレーション2回目開催

2018年5月 大手日本企業、製薬会社の社員の啓発セミナーにて170人に書道のワークショップを実施。

2018年8月 日本にて書道と墨絵のワークショップ4回開催

2018年9月 スコットランド、コーデン城日本庭園にての夏祭りにてデモンストレーション及びワークショップを2日間に渡り開催

2018年9月 ケント州、ウィリアムアダムスのお祭りにてデモンストレーション及びワークショップを開催。

2018年10月 ジョージア国にて日本大使館主宰のイベント『徳川とマスターズ』にてジョージア国立美術館他4会場にて4日間に渡りデモンストレーションを実施。日本からは水戸徳川家15代、松平家12代茶道家元、有田焼酒井田柿右衛門15代がイベントに参加。

2018年11月 英国兵法二天一流英国支部のセミナーにてデモンストレーションを実施。

2018年12月 真合道空手道場のメンタルヘルスチャリティーセミナーにてデモンストレーションを実施。

2019年4月 日本、ドリームハウスにて書道及び水墨画のワークショップの実施。

2019年5月 ロンドン、酒チャレンジにてデモンストレーションを実施。

2019年6月 トムリンスコートセカンドリースクールにて講演とワークショップの実施。

2019年7月 ジョージアの日本大使館主催で、ピロスマ二美術館、及びルスタビの劇場にてデモンストレーションを実施。トビリシの大学内のジオラボにて講演とワークショップを実施。

2019年9月 スコットランドコーデン日本庭園にて講演とデモンストレーションを実施。

2019年9月 ケント州の盆栽協会にて講演とデモンストレーションを実施。

2020年7月より 英国ハイパージャパン主催のオンライン書道及び水墨画ワークショップを毎月開催。

紅秋書道教室

紅秋の教室には、6才の子供から80歳までの様々な国籍を持つ生徒が参加します。2019年からはオンラインレッスンの開始により、国境を超えて、国内も遠方から、そして海外からの生徒の指導が可能になりました。生徒は日本の文化や、書道や墨絵の技術を学ぶことに情熱的ですが、中には個々の心と向き合うために筆を握る生徒もいます。紅秋は技術だけを教えるのではなく、師匠から受け継いだもの、紅秋自身の人生を通して学んだ事なども伝えています。少人数でのレッスンで生徒一人一人の心の状態をみながら、可能性を見極め、最大の上達に繋がるよう、一瞬一瞬を大切に指導しています。

 

2012年より東京の文化書道学会を通し、検定試験へのチャレンジを始めました。現在では生徒の多くが毛筆部門、硬筆部門に登録し真剣に取り組んでいます。そのうち紅秋の指導の元、国籍問わず現在毛筆部では8名の師範が硬筆部では7名が誕生しています。また個々の持つ限りない想像力を引き出し、制作していく深い喜びを感じ、そして書や水墨画の作品を生み出していくことも大切に取り組んでいます。

 

<生徒の作品展>

2003年生徒の作品展 第1回目ブレッチングリーセンターにて (20点の作品の展示)
2011年生徒の作品展 第2回目ケイトラムミラーセンターにて (42点の作品の展示)
2016年生徒の作品展 第3回目エプソムボーンホールにて   (101点の作品の展示) 

紅秋書道、墨絵アート

紅秋のその他の作品依頼、または作品の購入 (数例)

2004年5月   劇団の舞台道具として屏風を手掛ける

2004年6月   2004年2月の作品展後、作品の依頼を数点受け制作

2006年2月   英国SeeWoo Foods Limited 泗和行のパンフレット用の書の作品数点制作

2011年4月  ロンドン日本レストラン『まきレストラン 』5作品の書及び2作品の水墨画の制作

2012年6月 (Chugai Pharma UK co)英国中外製薬株式会社から、社内スタッフの名前入りブックマーク44枚の制作

2012年9月   フィリピンからの依頼で詩の作品制作

2012年10月 英国三菱自動車会社からの依頼、パンフレット用の作品の制作

2014年3月   英国、短編映画のタイトル “Imphal 1944” の制作

2014年6月   世界的大企業の(Libra Group Ltd)リブラグループからの依頼、ディナーのテーブル用の名前及び肩書き(会長他20数名分)のカードの制作

2014年7月   フランスより龍の篆刻の依頼、制作

2014年10月 英国華道池坊553年を記念し、日本から45代家元を招待される特別展示会にて、展示される短歌の作品制作

2014年12月  ロンドン日本レストラン『こうべ寿司 』の書の作品制作

2015年4月   英国クラフトジン『こころジン』のラベルの書の制作

2016年7月    ロンドン歯科医院の待合室展示用の水墨画『梅』の作品制作

2016年8月   カナダからの依頼で篆刻と書の作品制作

2017年6月 ロンドン、短編映画のタイトル『杉原千畝を繋いだ命の物語 ユダヤ人と日本人 過去と未来』の書作品を制作

2017年12月  ミュージシャンのアルバム用の作品3点制作

2018年3月 『こころジン』リキュールの新商品のラベルアート、書と水墨画の制作

2019年4月 Tazakiフード社の独自のブランド食品、『ユタカ』の新パッケージ制作に作品を制作

2019年5月 日本で開催された『ワールドラグビーアワード』に書、絵、篆刻の作品を制作。また撮影にも関わる

2019年6月 東京オリンピック2020の英国チームのキャンペーンに数点の作品の制作及び撮影に関わる

2019年10月 オーストリア、オペラ劇場の舞台アートに書と篆刻の作品制作

2020年3月 ジョージアの国立バレエ劇場で開催される公演『インクレイン』用の書の作品数点

2020年7月 英国フードカンパニー『職人 』のロゴ制作

2021年3月 スコットランド日本庭園 コーデンの茶室に書の作品1点、水墨画の作品4点を制作

 

* その他国内外から個人的な依頼、多数省略。

書の作品、水墨画の作品、ロゴ、ラベル、篆刻、道場訓、 賞状、タトゥーデザイン、

紅秋の作品 日本レストラン

2011年、ロンドン、リッチモンド(高級住宅地)に位置する日本レストラン『マキ』に紅秋は書道作品の依頼を受ける。パネル5枚に書き奥からライトを通すデザインで、調和をイメージし『和』を一枚に書き、後は季節、春、夏、秋、冬の季節の和歌と俳句を選び、一年中来られるお客さんに調和を感じてもらいたいという想いで作成した。またトイレの壁には日本女性の着物の姿と、桜(男性トイレ)竹(女性トイレ)を描き、和歌を書いた。

 

2014年、ロンドン、イーリングに位置する日本レストラン『神戸寿司』に紅秋の書道作品を制作。『気』と書いた作品は壁2カ所に大きくあり、ロゴ、看板、メニューにも使用される。

紅秋と関わりのある書家(暁風書院、近代書家系譜参考)

吉冨紅秋(ルーカス明美(1967- ) 八歳で藤本青山の『鳳南書芸会』にて書を学び始める。師の指導のもと西脇呉石の書風を学びさらに多数の著名な書家の書風にも触れる。二十五歳で山口に紅秋書道教室を開設し、平成十四年より英国にて国際的に日本文化、芸術の紹介に積極的に取り組み、東洋と西洋の芸術をブレンドした独自の作品を制作する。

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藤本青山 (1919–2004) 山口県に生まれ有田海鶴に師事。山口市に『鳳南書芸会』を開設し日本書道揮毫協会副会長を勤める。師、鶴堂の遺言で西脇呉石(日下部鳴鶴に師事)の書も学ぶようにと告げられ、呉石の書風と共に教育書道の基本練習に徹底した。『数理的結構法』を提唱し『美しい字』の探究に時間を惜しまず、一生涯を後進の育成に精進した。また表装の技術が達者で文化財の書作品の修復に貢献した。

 

 

有田鶴堂 (1899-1974) 山口県長門市に生まれ大正9年上京し書家の第一人者、日下部鳴鶴の門を叩く。鳴鶴の紹介で丹波海鶴に師事し、書家として歩み始める。仮名においては小野鵞堂(仮名書道の祖と呼ばれる)と高塚竹堂に師事し、当時の一流の大家と交わり日本の教育書道の革新と実用書道、芸術書道の振興に貢献した。小学校教論として転じる一方、萩に『暁風書院』を開設、後進の育成に精神的に取り組んだ。

 

丹波海鶴 (1863-1931) 日下部海鶴に師事。明治から大正にかけて活躍した書家で鄭道昭や初唐の楷書を基調とした海鶴の書風は海鶴流と称され一世を風靡した。比田井天来近藤雪竹と共に書壇の双壁をもって目され、書道教育界に影響を持ち習字教科書の書風を改革して近代書道教育の発展に貢献した。

 

日下部鳴鶴 (1838-1922) 明治新政府の内閣大書記官を勤め、退官後楊守敬の影響を受けて鳴鶴流を開いた。中村悟竹、巌谷一六と共に明治の三筆と呼ばれる近代書道の確立者の一人である。芸術家としても教育者としても多大な功績をあげたと称えて『日本近代書道の父』と評される。数多くの弟子を育成、現在でも彼の流派を受け継ぐ書道家は多い。

紅秋書道、墨絵アート